レコーディング機材の移り変わり

「細野晴臣 録音術 ぼくらはこうして音をつくってきた」今この本を読んでますが、大変興味深い話しや資料なんかがあり、とても面白く読んでます。主に1980年代~なんかの話が多いですが、やはりこの頃は今と全然機材が違いますね。今回は僕が見てきた機材の移り変わりを書いてみようかと思います。

 

 

レコーダー

僕がレコーディングスタジオに本格的に入ったのは、2005年頃からです。2005年頃といえば、まだ音楽業界がそれなりに元気だった時代なように感じてました。なんだかんだバブリーな現場とかもあった事ですし。

 

「細野晴臣 録音術 ぼくらはこうして音をつくってきた」の中では、8トラックレコーダー、16トラックレコーダー、24トラックレコーダーなんかが主流の時代です。まあ今思うと信じられないんですが、そんな時代もあったようです。

 

僕がレコーディングスタジオに入った時は、すでにどのスタジオでもProtoolsが主流でした。たしか、バージョンは6とかですね。Protoolsの前はSony PCM-3348というレコーダーが主流だったんですが、もう僕が入った時代には1回も使われた事はありませんでしたね。

 

Protools時代になると、大きく変わったのが、やり直しが簡単に出来る、波形編集が簡単に出来る、とかですね。波形編集が出来るので、パンチインなんかも多少入れる所をミスしても波形編集出来るので、そんなにパンチインの精度を求められる事はありませんでした。

 

PCM-3348や、アナログレコーダーだとそんな訳にはいかないので、パンチインアウトにはかなりの技術が必要だったはずです。僕はその時代を知らないんですが(笑)

 

余談ですが、PCM-3348時代には、「神パンチ」という技があったらしいです。ベーシックの録音が終わったら、それぞれミュージシャンが直したい所をパンチインして直していく訳ですが、その数人のミュージシャンのパンチインしたい所を把握して、レコーダーを回しながら次々に色んなトラックのパンチインアウトを一気に終えてしまうという技です。

 

録音自体にかなりの技術を要しただけに、それを超越した技術も発展していた時代だったんだと思います。Protoolsだと機能上そういった事は出来ません(笑)

 

 

卓ミックス、内部ミックス

アナログ卓でのミックスというのも、ほとんど無くなってきた時代です。アナログ卓でのミックスは、一部の大御所エンジニアさんだけに許された特権的な扱いになっていたんではないでしょうか。Protoolsでのミックスだと後でやり直しがきくというのが大前提ですが、アナログ卓でのミックスは基本的にやり直しがききませんからね。

 

2005年頃はまだ卓ミックスというが有り得た時代だったんですが、徐々に少なくなっていったという印象です。

 

ちなみに、今の時代はほとんどDAWの内部ミックスだけに、アナログ卓を使えば良いミックスが出来るんじゃないかとも思われがちですが、そんな事はありません。僕はNEVEの卓を使ってミックスをしましたが、盛大にダサいミックスを作った経験があります。(練習でです。)

 

アナログ卓でのミックスはDAW内部ミックスと結構考え方が違うので、もう僕にはアナログ卓でのミックスは無理ですね。やれと言われたら、どうなっても知りませんよ?と念を押すかと思います。

 

この時代は、まだProtoolsの内部ミックスでは音が良くないなんて言われてたように思います。飽和感があるとかなんとか。そこで、Protoolsの内部ミックス+卓にステム出し、サミングミキサー使う、アナログエフェクターを使う、とか色々エンジニアによって工夫されていたかと思います。

 

もう今の時代ではほとんどそういう事を聞きませんね。Protoolsの性能も上がってきて、内部ミキサーやフェーダーの精度も上がってきてますし、わざわざアナログでミックスする必要性がなくなってきているように感じます。

 

 

マスター

2ミックスマスターは何にするのか、というのが2005年頃はいくつか選択肢がありました。

 

2005年頃の主流は、主にDATでした。その次にProtoolsのバウンスファイル、後はアナログハーフですね。DAT、バウンスファイル、アナログハーフを全て用意して、マスタリングでどれを使うか選ぶとかも結構あったように思います。

 

時代が進むにつれ、どんどんDATが無くなっていき、ほとんどがProtoolsのバウンスファイルのみでの納品が多くなってきましたね。アナログハーフはその質感が好まれたりするので、たまーにアナログハーフが出たりもしました。

 

細かい話ですが、2005年頃のProtoolsのバウンスファイルでのマスターというのは、ステレオインターリーブにするのか、マルチモノでLとRを分けるのか、で論議がありました。当時のProtoolsはステレオインターリーブに対応していなかったので、ステレオインターリーブファイルにするには、Protools内部で一回変換を掛けるので音質が悪くなる、なんて事も言われてた時代です。

 

もうさすがに今の時代ではそんな事言われなくなってきましたね。

 

 

チェックで聞くように渡してたもの

2005年頃はほとんどCDRを焼いて渡してました。少し前まではMDなんかもあったみたいですが、もう僕がスタジオに入った頃には一度もなかったですね。

 

今では、CDRもかなり減ってきていて、そのほとんどがデータで渡してます。みんなノートPCなんかを持っていたりするので、USBメモリーに入れてコピーする、もしくは後でネットで上げる、みたいな感じです。

 

 

レコーディングスタジオの在り方

昔を比べると随分レコーディングスタジオは減りましたね。僕が東京初めて出てきた時にアルバイトでとある大型スタジオで半年ほど働いてたんですが、そこも無くなってしまいました。まだ建物はあるようで?数億円で売りに出されている?という噂ですが、買えるもんなら買いたいです。(無理だけど。)

 

2005年頃当時でもスタジオがどんどん無くなっていくなんて言われてましたが、そこからさらにスタジオは減りましたね。

 

ちょっと前にプロデューサー佐久間さんのブログが話題になってました。

音楽家が音楽を諦める時

 

なんだかんだプロユースのレコーディングスタジオというのは、音楽を作るノウハウが色々詰まっていて、ミュージシャンやスタッフがパワーアップするには最適な場所であったりするのです。こうやって音楽を作る予算が少なくなってきて、スタジオを使う機会も減ってきているというのは少し悲しいところでもあります。

 

今後、音楽業界はどう変化していくんでしょうかね。衰退しないように願うばかりでございます。

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