EQのテクニックとは

EQのテクニックとはいったい何なのか。を思いついたので色々書いてみたいと思います。

 

 

まず、いきなりですけど、駄目なEQの典型を乗せると、数値は適当ですが、だいたいこんな感じです。Q幅を狭くして何か所も激カットしてますね。

 

 

こういうEQの仕方たまに見るんですけど、ぶっちゃけダメなEQの仕方の典型的パターンです。たまーに他のエンジニアさんがやったミックスがよくないからやり直して欲しいという依頼が来るんですが、そういう時にこのパターン多いんですよね。。

 

なぜこのようなEQを仕方をしているかと言えば、だいたい想像つくんですが、書籍なんかでEQのテクニックとして音の余分な成分をカットして音の灰汁を取り除きスッキリさせる的な事が紹介されていたりします。

 

こんな感じでぐいっと突いてフリケンシーを動かして音の余計な成分を探しましょうみたいな。

 

 

たしかにこういう使い方をする場面は多少あります。そういう時って、録りの段階で一カ所ないし数か所激烈なピークがあるように録れていて、そこをどうしてもカットせざるを得ない場合です。でも、基本的にちゃんと録っていればそういう事は起こりえないので、つまる所、僕に言わせると録りが失敗しているといってよいかと。

 

つまり、こういうEQをする時はとても特殊なパターンで、普段から日常的に使うようなやり方ではないんです。それがダメなミックスの場合、ありとあらゆる楽器にこういったEQが入っていたりするんですね。

 

これ何でダメかと言うと、楽器の鳴りが凄くしょぼくなるという事です。自然界では有り得ない事をやっている訳です。通常、楽器の生音は耳で聞いて音の良し悪しを判断している訳ですが、楽器の種類によってどの辺りの周波数が多く出ているかの差異はあれど、そこをピークになだらかに山なりに各周波数が分布しておりまして、急激にどこかが凹んだりしているという事は基本ありません。

 

スネアに関しても、ボスっとした低域の太い音、中域の胴鳴り、カーンとした皮やリムの音、バシャっとしたスナッピーの音、なんかが同時に鳴っております。それぞれが自然に連なってスネアの音として認識されていて、そこを人工的にドーンと激カットしてしまうと楽器の鳴りとしてどうしても不自然になってしまいます。音の位相が悪くなるとも言います。

 

スネアなんかはたまにマイキングの加減やスネアのもの自体によって特定の周波数が激録れしてしまう時もあるんですが、特に500Hz~800Hzくらいが多すぎる時がたまにありますね。マイクを皮に近づけ過ぎて近接効果によって100Hz~200Hzがむっちゃ多いなんて時もあります。

 

そういった予期せぬ事が起こり得た場合のみ、慎重にピンポイントで不自然にならないように激カットをするというのが通常です。

 

あと、これまたたまにあるのが、ありとあらゆる所がカットされていて、もうそれただ音量下げた方が良くない?みたいな場合も。。

 

録り音がちゃんとしていればそういう事をする必要はなく、録り時にそういった事も踏まえて良い収音が出来るようにマイキングであったり、ミュージシャンの方と相談しつつ進めていく訳です。

 

 

EQの基本的な使い方

そもそもこれ大前提なんですが、EQの使い方の極意を結論から言ってしまうと、使う必要がなければ使わない方が良い。

 

むっちゃこれです。こんな事言ったら元も子もないんですけども。。要するにEQというのは万能では無くて、なんでもかんでも音を自由自在に変えられません。

 

EQの本来の役割としては、その名の通り「均一化(equalize)するもの」でして、マイキングやトラックの加減によって質感が不揃いになっているものを均一化させて全体の整合感を作る事が主な役割です。

 

僕は基本的に録音時に全体の質感を調整しながら収録しているので、ミックス時に使うEQはおおよそ±2dBくらいの範疇に収まる事がほとんどです。ギターなんかはほぼノーEQの事が多かったりします。ギターはアンプにEQついてるので、ミュージシャンと相談しながらEQの加減を調整してるからですね。

 

それと、均一化させる事の役割の他、積極的音作りの為に使うケースもあります。ミュージシャンがコンパクトエフェクターとかで使うEQなんかはもろその役割ですね。ミックスにおいても、特にドラムなんかは現代の音作りだと激EQした音が一般的になっていたりするので音作りとして使用する場合も多いですね。

 

それプラス、各楽器の周波数がぶつかっている所を多少整理して分離を良くするという事ですが、これはあくまで最後の最後で微調整をするくらいの範疇に収めて、冒頭のような極端な削り方をするとそもそも楽器の鳴りがおかしくなるという事です。基本的にはフェーダーバランスでなんとかなる場合がほとんどです。

 

ただ、補足としてなんですが、エンジニアにも宗派があってですね、録りの時にマイキング適当でも、激EQしまくってバッチリ良いミックス作るなんて方もいたりします。僕はその宗派ではなく、あんまりEQしない宗派なので、こういったやり方してますよ的な。

 

とはいえ、僕のやり方で楽器の音が悪いと言われた事がなく、だいたい楽器の音が良いねと言われる事が多いので、楽器の鳴りそのものを重視するならこういったやり方がある程度正解なんではないかなーと思っております。

 

 

EQで均一化させる

この一番重要なEQで均一化させるという事ですが、これが意外にムズいのです。楽曲はドラム、ベース、ギター、ピアノ、シンセ、ボーカルなど、それぞれ色んな楽器が鳴っているんですが、その音の硬さや柔らかさがどのくらいあるか?という表現に置き換えるとなんとなく分かるかなと。

 

ミックスで重要なポイントの1つとして、各楽器の音の硬さを揃えて均一化させるというのが重要です。ダメなミックスの場合、これが揃ってないので全体の整合感がなく別次元でバラバラで鳴っているようになっていたりします。

 

もう少し言いかえると、良いミックスというのは同じ場所で演奏している感じを出す、みたいな感じでしょうか。

 

んで、この音の硬さを聞き取る能力というのが必要なんですが、この能力がどのくらいあるかでミックスの力量が決まったりします。この能力は意識的に訓練しないと身につかない事だったりします。素人にこれとこれ音の硬さが違うんだけど分かる?と言っても訓練されてないとさっぱり聞き取れません。

 

レコーディングの時は、特にこの音の硬さを揃えるというのはかなり意識して録音してます。ここにもある程度ノウハウみたいなんがあるんですが、この音の硬さを揃えて録らないと後々ミックスでむちゃくちゃ苦労します。EQをあーでもないこーでもないとこねくり回して無限に正解ないのをループするみたいな。。

 

写真のレンズを開発している方達は微妙な色の変化を識別する能力が非常に必要だったりして、新人が微妙に違う色を見ても全然違いが分からないけど、ベテランの人が見るとその違いが普通に分かるそうな。耳も似たようなものでして、耳から入った情報の微妙な差異を聞き取れるように脳の神経回路を鍛えないとその違いが分からないという事になります。

 

どこまで周波数を聞き取れるかという耳の良さではなく、どれだけ差異を感じ取れるかという事の方が重要です。

 

ちょっと脱線しましたが、各トラックの音の硬さを聞き分けて、それらの硬さをEQで合わせていく作業が必要になってくる訳ですね。ちなみに、EQを使う必要がなければ使わない方が良いという事の真意は、元々硬さが合っているならば音が悪くなるEQを使う必要がないって事です。

 

分かり易い例で言うと、録音した生音と打ち込みのシンセが混ざっている楽曲なんかは特にこれを意識しないとダメですね。生音は基本的に音が柔らかい事が多く、打ち込みなんかは音が硬い事がほとんどです。これを1つの楽曲で混在させるならば、生音の音を硬くしてシンセ類に合わせる、シンセを柔らかくして生音に合わせる、もしくはその中間を狙う、みたいな事が必要になります。

 

生音にシンセ混ぜて何もしなかったら、生音むっちゃもこもこして埋もれるみたいな。

 

シンセでないにしろ、そういった各楽器の質感を合わせてこそ1つの楽曲として整合感が生まれる訳です。

 

冒頭で述べたようなEQの使い方の考え方は、個別でしか見ていない場合が多くて、もっと全体を俯瞰して見ながらEQを調整しないとダメですね。

 

このどこまで硬さを作るか?どのくらいの硬さがベストか?というのは各エンジニアによって色々自説がありまして、それぞれのエンジニアによって硬さの中心点が違っていたりします。シャキっとゴリゴリに作る人もいれば、柔らかくふくよかに作る人もいる訳です。まあこの辺りは好みだったりもしますね。

 

ちなみに、じゃあどこに硬さを合わせるんだ?という事ですが、基本的には歌に合わせながらオケの硬さを調整していくというのが一般的です。

 

よくあるダメなパターンなんですが、それぞれの楽器をソロでドラム作って、ベース作って、ギターを作って、みたいな感じでオケから先に作り上げた後、歌を足してみたら歌が全然しょぼい、質感全然合わない、みたいなケースです。基本楽曲の中心は歌なので、歌を常に出しつつ、全体を見てオケの硬さを歌に合わせて調整していくというやり方の方がうまくいく事は多いですね。

 

なので、僕のミックスのやり方としては、初めにある程度の音作りと確認の為に各楽器をソロで出していって、おおよそのバランスが取れたら後は常に全部の音を出しながらそれぞれの音とバランスを調整していきます。ソロで聞いてむっちゃいい音してても、全体で鳴らした時に埋もれていたり、馴染んでなかったりしても全く意味がありません。

 

という事で今回はこの辺りにして、また気が向いたら積極的音作りのEQパターンなんかを書いてみたいと思います。なんといいますか、料理にもある程度下ごしらえや調理法にセオリーがあって、そこから崩していく事でおいしい料理になる訳で、ミックスにもある程度そういったセオリーが存在するんですね。

 

という事でまた次回。

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