レコーディングエンジニアのやり方の違い

昨日は、某レコーディングセッションで、とある大御所レコーディングエンジニアさんの現場を見学させてもらいました。一般的にも名の知れてるレコーディングエンジニアさんです。

 

 

僕のアシスタント時代は、一人のエンジニアさんのアシスタントという形でやっていた為、色んなエンジニアさんがひっきりなしに来る商業レコーディングスタジオでのアシスタントと違って他のエンジニアさんの現場を見るという機会が圧倒的に少なかった訳です。ましてフリーのエンジニアになってしまうと、なおさら他のエンジニアさんの現場を見る機会なんてなかなかありません。

 

なので、他のエンジニアさんの現場を見れる機会があるなら、勉強の為に出来るだけ見学するようにしてます。

 

まあ、なんと言いますか、エンジニア毎にほんと驚く程やり方が違います。なんでここまでフォーマットが決まってないのかと言うくらい。マイクの立て方から始まり、レベルの取り方、レコーディング中の流れの作り方等色々。

 

エンジニアによって何が違ってくるのか、をざっと書いていこうと思います。

 

 

マイクの立て方の違い

大きく変わってくるのはドラムかと思います。マイクを立てる本数が多いからというのもありますが。他の楽器でももちろん違いますが、ここではドラムのマイキングを例にして、気にするポイントというのをいくつか挙げていこうと思います。

 

・キック

基本的にオンマイクとオフマイクを立てます。オンマイクはダイナミックマイクを使用して、キックの中にマイクを突っ込むというのが多いです。エンジニアによってオフマイクの立て方が結構違うように感じます。オフマイクにダイナミックマイクを使うのか、コンデンサーマイクを使うのかで分かれるかと思います。

 

僕はオフマイクにダイナミックマイクを使うんですが、コンデンサーマイクを使って、よりキック全体の空気感を録る役割とする方が多いような気がしています。ちなみにオフマイクにもダイナミックマイクを使うとアタック感は強調されやすいです。

 

・スネア

スネアボトムの立て方はどのエンジニアでもだいたい一緒なんですが、スネアトップの立て方はエンジニアそれぞれのこだわりなんかがあるように感じます。

 

スネアのマイキングでのポイントは大きく分けて2つあって、まず1つ目にマイクをリムの中の入れてしまうのかリムの外に出すのか、2つ目にスネアの打面とマイクの距離です。

 

マイクをリムの中に入れるのか、外に出すのかは、スネアのリムの響きをどれだけ入れたいかです。リムの中に入れてしまえばより皮の音が録れるので、スネアの低域が多く太い音で録れます。リムの外に出すと、リムの響きが多く入るので、カーンとした抜けの良い音に録れます。これもエンジニアによって変わってくるんですが、リムの中に入れて太く録ろうとする人が多いかと思います。

 

スネアの打面とマイクの距離は、どれだけスネアの空気感を出したいかによります。距離に関しては、大きく分けて二通りあって、1cm~3cmくらい近づける派か、10cm~15cmほど離す派に分かれるかと思います。近いほど太く録れる分、空気感は無くなります。離せば音は細くなる分、空気感は出てきます。

 

ちなみに僕は1cm~3cmくらい近づける派です。

 

・シンバル

シンバルマイクの立て方はエンジニア毎に考え方が大きく違いますね。これも大きく分けて二通りに分かれるんですが、シンバルだけを録るのか、ドラムキット全体も含めて録るのかです。

 

シンバルだけ録るやり方だと、ハイシンバル、ローシンバル、ライドシンバルの3点に30cm~50cmくらいの距離でコンデンサーマイクを立てる事が多いです。各それぞれのシンバルの高さに合わすので、各マイクの高さはバラバラです。こちらの方が各シンバルの音をコントロールしやすい分、全体の空気感は減ります。

 

ドラムキット全体を録るようなマイキングだと、ドラマーの頭の上から、同じ高さでハイ側ロー側に2本立てるやり方です。こちらはドラムセット感や空気感が出る分、シンバルやライドの粒立ちは少しぼやっとします。

 

僕はもうほぼほぼシンバルだけ録るやり方でやってます。

 

・アンビエンス

アンビエンスでの立て方で大きな違いは、モノラルで録るのか、ステレオで録るのか、です。

 

モノラルで録ると、力強さみたいなものは増す分、空気感は減ります。ステレオで録る場合は、空気感は増す分、全体像がぼやっとします。

 

とまあ、他にも細かい事は色々あるんですが、大まかに分けてこんな感じです。ドラムのマイキングは、エンジニアそれぞれが優先する事項を考えてマイクを立ててる訳ですね。僕はなるべく空気感を抑えて、後でコントロールしやすいように録ってます。でもまあここの辺は正解が無く、曲やアレンジにもよるし、ミックスのやり方によっても変わってきますね。

 

 

レベルの取り方

レベルの取り方は大きく二通りに分かれます。1つ1つ音を出してもらいながらレベルを取っていくか、全体で音を出してもらってレベルを取るか、です。

 

1つ1つ音を出してもらいながらレベルを取っていくやり方だと、例えば「キック下さいー」、「じゃあ次スネアくださいー」、「ベース下さいー」、みたいな感じで1つ1つレベルを取っていきます。こちらの方がミスが少なく、確実なんですが、バラバラに音のレベルを取るので、全体の整合性を取りにくいのと、少し時間が掛かります。

 

全体で音を出してもらってレベルを取るやり方だと、ドラムならドラム全体で音を叩いてもらってレベルを取ったり、他の楽器も含めて全員がせーので演奏してもらいながらレベルを取ります。こちらの方が全体の整合性が取れるのと、その演奏者の出す音量が分かるのでレベルを決めやすいんですが、チャンネルにノイズがあったり等のトラブルには気付きにくいですね。

 

じゃあ、1つ1つ音を出してもらいながらレベルを取っていって、その後全体で演奏してもらってレベル取るのがいいんじゃない?とも思いますが、それだとレベルを取る時間が掛かり過ぎてしまうので、演奏者のテンションが下がってしまったりする事もあるので、注意が必要です。

 

僕はケースにもよるんですが、全体で音を出してもらったレベルを取った方が全体の中でのバランスが見えやすいのでそうしてます。1つ1つ音を出してもらうというのはあまりしません。(たまに確認の為なんかで1つ1つ音を出してもらう時もあります。)

 

 

レコーディング中の流れの作り方

ここがエンジニアとしての能力の差がはっきり感じられる部分です。要はレコーディング中のコミュニケーションの取り方です。

 

エンジニアはあの手この手を尽くして、その限られた時間の中で、より良いテイクを演奏してもらうべく頑張る訳です。レコーディング中はナーバスになりやすいので、なるべくそうならないようにうまく流れを作る必要があるのです。

 

それと、どこまでアレンジなどにも意見していくか、なんかもあったりします。でもまあこの辺りはケースバイケースなので、一概にこういうやり方が正しいというのはなかなかないですね。

 

ここで冒頭の話に戻るんですが、その見学させてもらった大御所エンジニアさんというのは、この流れを作るというのが非常にスムースでした。まず演奏者に良い演奏をしてもらわないと良い録音もクソもないのです。

 

クリックの音色や強弱の付け方で演奏自体が変わるので、曲に合うクリックを提案したりや、こうした方がアレンジ的に良くなるんじゃない?みたいなアイデアの出し方、演奏者に対する話し方や接し方など、大変勉強になる事が多かったです。

 

どさくさに紛れて色々疑問点を質問とかもさせてもらいました。

 

また機会があれば他のエンジニアさんの現場を見に行きたいもんです。どなたかお願いします。

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