レコーディングエンジニアへの道のり
昨今、音楽業界の縮小に伴い、レコーディングエンジニア業界も仕事が無くヒーヒーのフーフーだなんて話も良く聞きますが、それとは反対に仕事が沢山あってイエイイエイのウォウウォウだなんてエンジニアさんの話も聞きます。という事で、今回はレコーディングエンジニアへの道のりについて書いてみようと思います。
レコーディングエンジニアというのは、完全なる人気商売です。日本の場合は、通常アシスタントエンジニアを経て、レコーディングエンジニアたるものに昇格?する訳ですが、レコーディングエンジニアになった所で、指名が無ければ仕事がありません。
まあ厳しい世界です。
それはさておき、どうやってレコーディングエンジニアというものになっていくのかをよくあるパターンで説明していきます。
まず、アシスタントとしてレコーディングスタジオに勤めるのが最初ですね。だいたいのレコーディングスタジオというのは、録音が主な業務で、その録音する為にエンジニアのアシスタントとして色々仕事する訳です。
例えば、エンジニアがこういうマイクを立てたいという事であれば事前にマイクをセッティングしておいたりだとか、卓周りのルーティングを設定したりだとか、Protoolsの操作をしたりとかです。
ここでアシスタントは色んなエンジニアのやり方を見て勉強していきます。
数年も立つとだいぶ慣れてくるので、Protoolsの操作なんかも速くなってきます。たまにアシスタントでやたらProtoolsの操作が速い人いますね。はえーと思ってアシスタントの手元を見てると、ショートカットの操作が速すぎて手が残像しか見えてない時があります。
余談ですが、僕はインドの打楽器タブラというものインド人に習ってた時期がありますが、それも先生の手の速度が速すぎて残像しか見えてませんでした。それとよく似てます。
そう、アシスタントはProtoolsの操作が速ければ速い程、評価が高くなります。Protoolsの操作の速度が違うだけで結構プロジェクトの進行具合が変わってくるので、スピードはとても重要です。
Protoolsはショートカットがとてもうまく出来てるなーと感心しますね。ショートカットを多用する人だと画面を見てていったい何が起きてるのかさっぱり分からないままどんどこセッションが整理されていくので面白いですね。
と、話しが横道に逸れましたが、Protoolsの操作が速かったり、程よくエンジニアの失敗をカヴァーしたり、コミュニケーション取るのがうまくなったりなんかしていくうちにエンジニアやアーティストからアシスタントの指名をもらったりします。
そこでクライアントやエンジニアと仲良くなってきて、ふとした時にチャンスが巡ってきます。たまたまエンジニアが風邪ひいて倒れた、エンジニアが来る途中に事故った、エンジニアが失敗してクビになった、なんて事があり、ちょっとアシスタントの君、録音やってみてよ。なんて事が起きます。
で、そんな事もありつつ、何回も録音を任されていくうちに、録音終わりのラフミックスがなかなかイイネ、なんて事を言われてみて、今度ミックスもやってよ。と言われていきます。
そんなこんなでミックスも評価され始めてくるとレコーディングエンジニアとして独り立ち出来る訳です。
と、まあこれはものすごくうまくいったパターンですが、ぶっちゃけこうなる可能性はかなり低いです。このミックスという部分がかなりネックになってくるんですが、アシスタントとしての力量と、エンジニアとしての力量は結構別物です。(似てる所もありますが)
例えば、アシスタントとしてもの凄く優秀で、スーパーアシスタントとして有名でも、実際にミックスをやってみたら全然ダメで結局エンジニアになれなかったというパターンもあります。
下積みを長く積んだとしてもエンジニアになれないかもしれないというのはなかなか残酷な世界です。
ちなみに僕はアシスタントとして業界でもトップ3に入るくらいのスーパーダメアシスタントでしたが、今こうしてエンジニアになれております。人生何が起きるか分かりませんね。
エンジニアになる為にはミックスが良いというのが必須なんですが、このミックスが良いというのがまた難しいのです。
通常レコーディングスタジオだと、録音業務がほとんどなので、録音自体のノウハウはエンジニアから色々盗めても、ミックスのノウハウがなかなか掴めません。今は予算の関係で、スタジオを使ってミックスをするというのがほとんど無いからです。
たまーにはあるので、そこでノウハウを無理矢理盗むしかないですね。それかしこたま練習するか。とにかくアシスタント時代は録音の技術を磨くより、ミックスの技術を磨いた方がエンジニアになる為の近道な気がしています。
やはりエンジニアで指名されるにはそのミックスの個性を期待されなければならない訳ですから。
あと、有名なエンジニア程、録音時でも独特の個性が強いと聞きます。エンジニアによって言ってる事ややってる事がほんとバラバラなので、何を信じて良いのかさっぱりですが、エンジニアになってからはともかく謎の強い理念と個性を持たなければなりません。
レコーディング中は常にハイテンションで踊ってるとかでも個性として案外許されるような気がしてます。(実際聞いた事がある。)
無理矢理にでも個性を打ち出すというのは今後とても重要になってくると思います。
まだまだ僕は新米エンジニアですが、これからも頑張っていこうと思います。修行です。