EQのテクニックとは2

前回、積極的音作りのEQパターンを書くという事で終わりましたので、そのパターンを書いてみたいと思います。

 

と、思ってたんですが、この積極的音作りのEQパターンというのがほぼ無いという事に気づきました。前回の時はミックスにはセオリーがあるんですね、とか偉そうに書いてましたが、正直あんまり無いです。書くネタ無い。

 

果たしてこれが積極的音作りのEQパターンと言えるのかは分かりませんが、ほぼデフォルトでがっつりEQをする前提のものは2つあります。それは、キックとコーラスです。僕の場合、がっつりEQをするというのはこれくらいしかありません。後の楽器はこじんまりとちまちまEQ少しだけしてるだけです。

 

この数少ない積極的音作りのEQパターンですが、まずキックからそのEQ例を見てみようと思います。

 

結構多用するのがこのパターンです。キックをこんな感じのEQにするとあのよく聞くロックのバチバチっとした音になります。3kHz~6kHz辺りを激上げして、アタックのバチって音を強調している訳です。重さも強調するべく70Hz~100Hz辺りを少し上げてますね。300Hz~500Hz辺りを少し削ってるのはいわゆるキックの胴鳴りと呼ばれるものを減らしてスッキリさせてます。

 

不思議なもので、キックだけは生で聞いてる音とかけ離れていてもそれほど違和感はありません。歴史が作ってきた慣れというのもあるんでしょうけど。そして、下記のようなパターンもたまにやります。

前者と違うのは、強調する部分が違うという事なんですが、900Hz~2kHz辺りを上げるパターン。バチというより、ボコッみたいな音が強調されます。ロックみたいなキックの音作りが当然合わない音楽もある訳で、なんでもかんでもバチバチさせときゃいいってもんではありません。

 

もっと低めの500Hz~800Hzくらいを強調した布団を叩いてるかのような、別名を布団キックと僕が勝手に呼んでるパターンもあったりします。もちろん、何もEQしないって時もあります。まあ、要は曲に合わせたキックの音作りをしようね!って事です。(当たり前)

 

このキックだけはほんと多分に音作りをする余地がありまして、キックの音を制すものは音楽を制すという格言を今適当に思いつきましたが、キックだけは自然界で鳴ってる音とかけ離れた音を作っても成立するという要素がある訳でございます。これがなぜだかは知りません。

 

スネアも意外にそうだったりしますが、EQでポイントを激上げするというのはあまりありませんね。まあたまにしますけども。

 

で、2つ目がコーラス。ハモも含まれてたりしますね。よくやるEQ設定はだいたいこんな感じです。

低域にローカット入れて、300Hz辺りを削り、ハイを激上げします。

 

このハイの上げ具合は曲によってなんですが、こんな感じのEQをすればよく聞くフワーっとしたコーラスになったりします。ポップスとかで色々楽器が鳴っている時は上記の画像よりもっとハイを上げたりなんかもします。逆に音数が少ない曲だとここまでハイを上げると不自然になったりする場合もあるので、それは曲によってですね。

 

コーラスとかハモの場合は、こういった極端なEQをしないとなんか音がもっさりと重くなりすぎるんですね。あと、メインの歌が鳴ってる時なんかはEQをしないと全然音が抜けてこない訳です。単体で聞くと凄い薄っぺらい音なんですが、全体で混ざるとこれくらいでちょうど良かったりします。

 

と、まあ極端にEQするのはこの2つくらいであります。キックとコーラスは基本EQをする前提で考えますが、その他はEQをしない前提で考えます。

 

前回書いたように、EQを無駄にあれこれいじくり回すというのは素材の良さを消してるといっても過言ではありません。とはいえEQをしないと成り立たないというパターンもあるので一概には言えない部分もありますけども。

 

ちなみに、音の抜けを良くしたいとなった時に単純に考えるとEQでハイを上げるという事なんですが、このミックスというのは全て相対的なものでして、例えば全部の素材でハイが上がっていればそれはハイが上がっていない状態とほぼ同義であったりします。

 

EQに関していえば、この相対的に考えるというのがとても重要です。EQというものはただ単に周波数の分布を変えるものだけの役割なので、基本前提としてEQを使えば音が良くなるという考え方はありません。高級なプラグインだったり、名機のアナログEQを使うにしても、それぞれ独自のEQカーブであったり、特徴的な歪みがあったりするだけであって、使うだけで音が良くなるという概念はありません。

 

要は適材適所です。

 

素人ミックスでよくありがちなのが、EQし過ぎ問題です。EQでなくとも、ありとあらゆるプラグインを刺しまくっているパターン。EQで大前提なのが、前回も言いましたが、使う必要がなければ使わない方が良い、使ったとしても最小限必要な事だけする、です。

 

あー、これダメなミックスだなーと思うパターンの1つとして、なんか全体的に音が遠いパターン。これって紛れもなく不必要なEQしまくっている典型です。高域ばかり意識して、中域や中低域の太さが全くないというのが結構多いんでないかと。

 

この中域や中低域の太さというのは結構重要でして、意外とミックスのキモになる部分です。中域や中低域をチャーハンで例えると、米そのものの旨さの部分です。(例えが合ってるのか謎)楽器の音というのは中域や中低域に美味しさが詰まってるものが多くて、そこを無理に削ったり高域を上げすぎたりするとどんどん楽器の音の良さがなくなっていく訳ですね。

 

つまり、美味しくしようと塩やコショウ、醤油やラー油などを足しまくっていくと、米本来の旨さが失われていくのです。しかも料理は手の込んだやり方をするもんだという潜入意識も重なってそのレシピを疑わないんですね。

 

でも本来のチャーハンはあくまでシンプルに素材を良さを生かす事で、本当に美味しいチャーハンが出来上がるのです。ちなみに補足ですが、これはあくまで想像なので本当に旨いチャーハンを食った事はありません。なんかそんな感じの事をテレビでやってました。

 

まあ、特に日本人はその特性により高域ばかりに耳がいってしまう傾向があると思いますね。日本の言語とか文化とかってやっぱり中高域~高域を意識する事が多いです。日本の言語も高域の微妙なニュアンスで意味を聞き取ってるんではないかと。英語とか聞くと、結構低域~中域が出てたりするので、やっぱり周波数的に結構違うなーなんて感じたりする事あります。

 

先日、和楽器を録る機会があったんですが、やはりそれもパワーの変換を中高域~高域に集中させてるなーなんて思っておりました。能なんかの舞台でのしゃべり方も高域を倍音を増やしてより遠くに飛ばそうという発想なんでしょう。西洋なんかはオペラを代表されるように物理的に体を大きくして声をでかくするという発想です。

 

と、話が脱線しましたけども、抜けを意識しすぎて高域を上げるという発想は西洋の楽器において逆効果って事が言いたい。そもそも今の日本の音楽で使われてる楽器ってほとんど西洋生まれの楽器なんで。まあここまで西洋の楽器が当たり前になったというのもある意味めずらしい話ですけども。

 

とりあえず、EQを使う前にフェーダーでしっかりバランスを取って、その後に必要最小限でEQをするという考え方です。自分のセッション見ると、手抜きかというくらいEQ入ってなかったりします。でもちゃんと録れていれば別にそれで良いのです。

 

あと、EQで周波数を整理しましょうという説は声を大にして否定したい。たまに、あーこの音太すぎるなーと思って中低域を削る事とかは多少ありますけどね。あと中高域が硬すぎるので少し柔らかくしようとかも。

 

これらは、あくまでフラットにしよう(音の硬さを揃えるという意味合い)という事であって、周波数を整理しようという考えではありません。周波数を整理するのはアレンジの役割でもあったりします。

 

とはいえ、もちろんケースバイケースなので、状況に応じたやり方をしなくてはいけないので、テクニックうんぬんよりまず耳を鍛えなさいってこったって事ですね。

 

耳を鍛えよう。終わり。

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