DAWでのリージョンの繋ぎ方
ProtoolsなどのDAWで、リージョンとリージョンとでクロスフェードを書いてプチっと言わないようにする、通称「繋ぎ」というものがあります。繋ぎ方を見るとそのエンジニアの腕が分かると言われています(たぶん)。中華料理屋さんなんかで、「チャーハンを食べればその店の料理人の腕が分かる。」みたいな感じに近いかもしれません。
繋ぎが必要になる場面は、パンチインした箇所、歌のテイクを組み合わせる、タイミングを直す、などですね。
繋ぎを極める事は、レコーディングを極めると言っても過言ではありません。とはさすがに言い過ぎですが、レコーディングやミックスにおいて非常に重要な作業の1つです。
今回はProtoolsでの繋ぎ方を書いていきます。他のDAWでも基本は同じです。
クロスフェードは短く、音のアタックぎりぎりで
大前提として、クロスフェードを書いてリージョン同士を繋ぐ時、繋いだという事がバレてはいけません。あくまで自然に。繋いだ事が聞いて分からないようにします。
クロスフェードする時間が長くなればなるほどクロスフェードしている事がバレやすくなるので、なるべくクロスフェードしている事が耳で認知されない長さ(1msec~10msecあたり)で書いた方が繋ぎは成功しやすいですね。
例えば、こんな感じでドラムをパンチインしたとします。右側の黒い部分がパンチインされたところです。
ちょうど、ドラムがフィルを叩いているところですね。ドラムがフィルを叩いた後、小節頭でシンバルを叩いた所からパンチインしています。ここで繋ぐ時に注意する事は、フロアタムの余韻です。
パンチインした箇所からはフロアタムの余韻は鳴っていないので、余韻の途中で繋いでしまうと、余韻がいきなりなくなるので不自然です。なので、もうほんと小節頭ギリギリでクロスフェードを短く書く訳です。こんな風に。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、キックとシンバルが鳴る直前ギリギリでかなり短くクロスフェードを書いてます。フェードがキックの頭にかぶってしまうと、アタックが無くなってしまうので、気を付けてフェードを書きます。
これが「繋ぎ」の基本形です。この形がだいたいどの楽器にも当てはまります。これをパンチイン等した箇所全てでやっていく訳ですね。
とはいえ、上記の様にしてもうまく繋がらない場合もあります。その時は、クロスフェードを少し長くしたり、繋ぐ場所を前後に少し変えてみたりします。繋ぎが成功しているかどうかは、ヘッドフォンでないと分かりにくいので、繋いだ箇所はヘッドフォンで確認するのが良いですね。
繋ぎ応用編
繋ぎプロともなると、いかなる状況であろうがうまく繋げなければなりません。様々な状況の中で、繋ぐのがとても難しい場面にも遭遇します。しかし、必ずキレイに繋いでやるという折れない心を持って臨む事がとても重要なのです。
下記は歌の波形ですが、赤い丸部分のタイミングを動かしての繋ぎ、という場面があったとします。リージョンが繋がっている部分なので、タイミングを動かした後に、ただクロスフェードを書いただけだともうまく繋がりません。
こんな感じで後ろに動かしました。
こういう場合、通常とは違う繋ぎ方をします。
リージョンを引っ張ります。
この状態だと、繋ぎ目でブチっと音がなりますね。この状態でクロスフェードを書いても、波形の周期が合ってないのでうまく繋がらない事が多いです。なので、波形を拡大して、右側のリージョンをこんな感じに中央線でクロスしてるところまで削って、
そして、グラバーツール(手のやつ)でぐいっと中央線でクロスしている所(黄色の線の所)までリージョンを動かして、
このように短くクロスフェード(1msecほど)を書けば、
何事も無かったかのようにキレイに繋がります。
リージョンの後ろ側も同じ要領で繋ぎます。歌のリージョン全体が動かないように、動かす部分だけリージョンを分割しておくのを忘れずに。
この繋ぎ方のポイントとしては、ゼロクロスしている所でフェードを書くだけでなく、波形の周期に合わせつつゼロクロスしている所で繋ぐというのが重要です。
こういった細かい繋ぎを繰り返して、リージョン全体をキレイに繋げていく訳です。
と、繋ぎテクニックの一部をご紹介しましたが、他にも細かい繋ぎテクニックがあったりします。これはまた機会があれば。
繋ぎが美しいと、セッション画面全体が美しく見えますね。
たかが繋ぎ、されど繋ぎ。リージョンを繋ぐ技は意外と奥が深いのです。