レコーディングエンジニアの心得とか
僕がレコーディングエンジニアとして心掛けてる事や、レコーディングエンジニアの心得、そしてそれをする意味などを書いていこうと思います。今回は主に自分たちで曲を作っているバンド、というのを対象にして話していこうと思います。
アレンジャーさんが曲を書いて、スタジオミュージシャンが演奏して作りあげるものに関してはちょっと話が変わってくるので、これはまた気が向いた時に書きたいと思います。
・事前に打ち合わせをする
これは結構大事です。アーティストがどういった音源を作りたいのか、というのももちろん大事なんですが、その人の性格や話し方などを主に見るようにします。
これは、こちらがどういう話し方をしたり、どういったテンションで接すれば良いかを考える為です。レコーディングでは閉鎖された空間なので、テンションの違う人がいると結構気になったりします。なので、こちらがなるべくアーティストにとって違和感のない立ち振る舞いをする為に、相手の性格などをみておく必要があるのです。
あと、おおざっぱに言うと、アーティストがSかMかで対応を変えるようにしてます。SかMかの中でもどのくらいのレベルなのかによっても大きく変わってくるのでケースバイケースなんですが、例えばドMの人には「もっといけるでしょ!」なんてハッパを掛けてみると良いプレイが出来たりする事が多かったりします。ただ、Sの人は、そういった事を言われる事が快く思わなかったりするので通用しなかったりします。
なので、Sの人にはなるべく素直に従うようにするパターンなんかもあります。従順な下僕になった方が良いプレイが出来るなら、それは正解だと言えるでしょう。
・ライブを見る
レコーディング前になるべくライブを見れるなら見ておくようにしています。
これはなぜかと言うと、アーティストにとってライブこそが彼らのやりたい事が詰まっているものなので、それを音源に反映させる為です。音源には意外と多いんですが、ライブと音源がリンクしていない事が結構あったりします。ライブが良いのに音源の世界観が違う、音源は世界観あるのにライブにはない、と言った事がよくあります。
アーティストとリスナーにとって「ライブ」と「音源」というのは密接な関係にあるものだと思っています。
音源が良かったからライブに行ってみたくなり、ライブに行ったら実際良くてファンになった。とか、ライブに行ってみたらすごく良かったので、音源買ってみたらまたライブを見たくなるような音源だったからまたライブに行く、等の音源だけではなくて、ライブとの相乗効果があってこそなのです。
そもそも、レコーディングされた音というのは、基本的に無味無臭である事がほとんどです。レコーディングされた直後の音は世界観がほんのわずかに付着してますが、もう残り香くらいのもんです。これは現在の音響技術の問題でそうなるんですが、そこにミックスで疑似的に世界観を足していく必要があるのです。
そこの方向性が本来アーティストがやりたい事とズレてしまうと、「ライブ」と「音源」が乖離してしまう訳です。
ちょっと話が脱線しますが、この「レコーディングされた音というのは、基本的に無味無臭」というのは音響時術が抱える問題であり、それを解決する為に僕たちレコーディングエンジニアが存在すると言っても過言ではありません。
現代の音響技術というのは、人間の耳の性能と比べると大きく見劣りします。例えば、カクテルパーティー効果なんかもその一例ですが、人間の耳は聞き取りたい音だけを選んで聞く事が出来ますが、マイクとレコーダーにはその機能がありません。マイクは音源からの距離と音量でしか判断出来ていません。
あと、人間の耳は音量に対して絶対的にである事に対して、音響は相対的であるというのも大きく違っている所です。人間の耳だと、大きい音は絶対に大きい音で聞こえます。ですが、音響の世界は大きい音も小さくする事が出来るし、小さい音も大きくする事が可能な世界です。
そんなこんなで、人間の耳と現代の音響技術では大きく差があるので、人間の耳で聞こえているような感じを疑似的に再現する事がレコーディングエンジニアの命題なのです。
レコーディングエンジニアの立場
レコーディングエンジニアというのは、あくまで、アーティストが描いている世界を具現化するという立場です。レコーディングエンジニアはアーティストではなく、その名の通りエンジニアです。
たまにレコーディングエンジニアがアーティストに対して、世界観を押しつける事があったりするなんて事を聞いたりしますが、それはもう言語道断です。そんなに自分のやりたい事があるなら、自分で金を出して自分の作品を作れば良いのです。
僕はミックスでエフェクトをぐいぐい掛けたりしますが、それはあくまでアーティストからの要望、もしくは潜在的要望があるからこそやっている事であって、好き勝手やってる訳ではありません。
言いなりになるのが良いのかと言えばそうでもなく、そのアーティストの世界観を作り上げる為にアイデア自体はどんどん出すべきだと思ってます。ただ、もしアーティストから「これはちょっと違うんじゃない?」なんて言われたら、僕はそっこう引き下がります。アーティストが「これはちょっ」ぐらいで食い気味に「OK!そうだよね!!」と言うぐらいの感じです。
立場を勘違いしては絶対にダメなのです。
とまあ、レコーディングエンジニアとして心掛けてる事や、レコーディングエンジニアの心得はざっくりこんな感じでしょうか。音源はアーティストの活動にとって欠かせないものであり、その活動をうまく潤滑させていけるようにする為には、音源をどう作れば良いかを常に考えています。
なるべく空回りしないように頑張っていこうと思います。