ミックスでバランスを取る時の考え方について

ミックスで、一番重要なのはバランスとか言いますが、いったい何をもってバランスが良いと言えるのでしょうか。これ、ぶっちゃけ説明出来ません。音をうまく定量化するって事はたぶん今の時代まだ無理なんではないかと思います。髪型の黄金比率と呼ばれているであろう七三分けみたいに分量をきっちり分けるなんて事が出来ない訳です。

 

ですが、確実にバランスの良い悪いというのは存在しています。

 

とはいえ、この楽器は○○VU、その比率に対してこの楽器は○○VUがベスト、なんていう事が存在していないのです。これ結構僕的には不思議なんですけどね。こういった音のバランスの比率というのがしっかり定量化出来てれば僕達エンジニアは苦労する事ないんですけどね。

 

ちなみに、2ミックス全体をアナライザーを見てもさっぱり分かりません。結局のところ、耳で自分で独自に判断するしかないのです。

 

 

プロのエンジニアは音をどう聞いているか

僕達エンジニアというのは、一般の方と比べて、耳の可聴範囲など、耳自体の性能が特別良いという訳ではありません。おそらく一般の方と耳の性能はほとんど変わらないでしょう。

 

何が違うかと言うと、主に音の変化を聞き取る能力が優れている、という事だと思います。耳の性能というよりかは、音を脳で処理する部分が鍛えられてる訳ですね。

 

音の僅かな変化をプロのエンジニアは聞き取っている訳です。例えば、0.1dBくらいの小さな変化でも聞き分ける事が出来ます。とはいえ、耳というのはかなり思い込みによって聞こえ方が変動するので、例え世界最高峰のトップエンジニアだとしても、ブラインドテストで正確に0.1dBの差を聞き分けるというのは無理でしょう。

 

僕の推測ですが、どんなに音の聞き方を訓練した人でも、1~2dBくらいは思い込みによって簡単に変動するんではないかと思ってます。例えば、1dBギターのフェーダー上げたよーなんつって実は上げてなかったとしても、思い込みによって実際上がっているように聞こえてしまうといった具合です。

 

あくまで、自分が0.1dBの変化を与えた事を認識した上で聞き取れる能力って事です。

 

と、僅かな音の変化を聞き取る能力が必要と言いましたが、実はこれって、DTM等を触った方ならお分かりかと思いますが、0.1dBくらいの僅かな変化でも慣れれば誰でもすぐ聞き取れるようになります。音量差を聞き分ける事自体はそんなに難しくありません。

 

では、何が音を聞く上で一番重要かと言うと、0.1dBくらいの僅かな変化によって他の音に対してどう作用しているか?です。

 

 

バランスは全て相対的

音のバランスは1つの楽器に対して、他の楽器全てに作用してきます。例えば、ボーカルを1dB上げたとすると、他の楽器全てに何かしら影響を与えてる訳ですね。何かの楽器を上げ下げすると、その分他の楽器も何かしら上げ下げされます。

 

なので、バランスを取るという事の作業自体、1つの楽器がどう全体に作用してるか?を聞きつつ、折り合いをつけていかねばなりません。ここを聞き分けれないとバランスを取るという作業自体が無理なんです。

 

これはぶっちゃけかなり難しいですね。この部分はとても奥が深くて、沼みたいなもんです。ここの能力の差がエンジニアがミックスをする上での能力の差といっても過言ではないかと思ってます。では、どう訓練するか、です。

 

楽器の訓練法なんかは結構色々体系的に確立されてますが、エンジニアリングの訓練法ってまったくもって体系的に確立されておりません。エンジニア論は各自言ってる事バラバラです。あの人はこう言ってたけど、この人は全くもって真逆の事を言ってるなんて事が日常茶飯事です。いったい何を信じれば良いのでしょう。

 

一応、僕的にはこうしたら訓練出来るんじゃない?的な事を言いますと、ミックスでパターン違いをいくつも作ってそれを聞き、楽曲がどう変化して聞こえるかを考える、というのが有効ではないかと思ってます。

 

例えば、1つのミックスがあるとして、そこから、

  1. キック1dB上げ
  2. ベース0.5dB上げ
  3. ギター1dB上げ
  4. ボーカル1dB上げ
  5. スネア1dB下げ
  6. ハイハット0.5dB下げ

みたいな感じで、ある程度ミックスが進んだら、いくつもパターンを作ってみて、それらを聞き比べてみてどう違いが生まれているか、というのを聞き分けたり考えたりする訓練です。

 

これを何回も繰り返していけば、1つの音が他の音にどう作用しているか?というのを聞き分けられるようになっていけるのではないかと思ってます。(たぶん)

 

 

音の組み立て方

では、実際音とどうバランス取っていくのが理想なのか、というところなんですが、もうこれはケースバイケースとしか言いようがないっちゃないです。とは言え、ある程度の目安は存在しています。

 

先日、Youtubeを徘徊していたら面白い動画を見つけました。

 

 

タモリ倶楽部でのミックスダウンの特集。なんとマニアックな(笑)

 

(株)ミキサーズ・ラボ 代表でもあるレコーディングエンジニアの内沼 映二氏がミックスについて解説されてます。なかなかこういった事がテレビで出る事はないのでとても貴重ですね。この中で、内沼 映二氏の理想とされる音のイメージが解説されてました。これはほんとその通りだと思います。(僕が言うのもなんですが。)

 

ちなみに、ドラム単体でもこの法則が当てはまると思います。ドラム3点だと、キック→スネア→ハイハットの順で音量バランスを組み立てると安定する事が多いです。

 

良くないミックスの例として、逆三角形になっているパターンが結構多いのではないかと思ってます。つまり、音の抜けばかり気にしてしまい、高域がどんどん上がっていき、逆に低域が少ないといった感じです。全体のバランスを組み立てる上でのイメージとして、このピラミッド型の形は大変参考になるんじゃないでしょうか。

 

あくまで目安ではあるので、この通りにやれば絶対うまくいくというものではありませんが。

 

まあ難しいです。修行です。

 

こういった音の目安やイメージのパターンというのはいくつかありますが、そもそも音の変化を聞き分けて、それがどう他の音に作用するか、が判断出来ないとイメージをするもクソもない訳ですから、バランスを取る為には、そういった能力を鍛えないとダメですよって事でした。

You may also like